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生産にはタカラバイオさんにも協力いただくなど、現在は複数の企業連合のような形で開発を進めています。人工知能(AI)を利用して、第2世代のDNAワクチンの開発にも着手しています。一方、DNAワクチンについては、ほぼ副作用はないと思っています。とりあえず社会生活を維持し、その間に治療薬や通常のワクチンの開発が追いついてくるための、リリーフ役でしかありません。Andrii Vodolazhskyi/Shutterstock.com他にも、プラスミドDNAをベースに、血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンII)に対する抗体をつくるDNA治療薬の開発にも取り組んでいます。高血圧のDNAワクチンです。弱毒化(あるいは不活化)したウイルスを有精卵に接種して、「抗原」(ウイルスがもつ、免疫反応を引き起こすタンパク質)をつくります。それを体内に入れることで、免疫を担う「抗体」ができるという仕組みです。Tero Vesalainen/Shutterstock.comただし、アメリカで仮にうまくワクチンができたとしても、それが日本にやってくるまでには時間がかかります。まずは、自国が優先になるはずです。加えて、仮に技術を提供してもらい日本で同じものをつくろうとしても、まったく同じ結果にはなりません。森下教授はアンジェスの創業者。現在は同社のメディカルアドバイザーを務めている。どういったワクチンを接種しても起こるため、そのリスクを踏まえてワクチンの接種対象を選ぶ必要があるでしょう。プラスミドDNAに新型コロナウイルスの表面にあるタンパク質の一部を作り出すような遺伝子を組み込み、体内に投与する。体内で目的のタンパク質が作られると、免疫システムはそのタンパク質を排除対象として認識する。その結果、ウイルスが体内に侵入してくると、表面にあるタンパク質を目印にして排除されるようになる。あらためて全く新しいものを開発すると、その承認に時間がかかりすぎてしまいますから。世界中で流行が続く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。その治療薬やワクチンの開発は急務とされている。どんなワクチンでも、接種する際にADE(Antibody Dependent Enhancement)という現象が生じることがあります。ウイルスに感染しないためのワクチンを接種することで、逆にウイルスに感染しやすくなってしまう現象です。DNAワクチンはパンデミック対策に向いているといえば向いていると思いますが、対策のメインとして長期間据えるのは厳しいと思っています。コロナウイルスのイメージ。開発中のDNAワクチンでは、ウイルスの表面に見られる突起状の構造を作る遺伝子を導入したプラスミドを体内へ注入することを想定している。体内で遺伝子がはたらくと、それに対応できる免疫がつく。プラスミドに組み込む遺伝子を調整したり、ワクチンと一緒に投与する「アジュバンド」と呼ばれる物質や、DNAワクチンと相性の良い抗体誘導ペプチドの研究を進めたりしています。新型コロナウイルスのDNAワクチンとして、アメリカのバイオテクノロジー企業のモデルナが新型コロナウイルスのDNAデータが公開されてから42日でRNAワクチン(DNAワクチンと似たタイプのワクチン)を作りました。一方で、DNAワクチンは大腸菌を増殖させれば(プラスミドDNAを増やせるので)、簡単に増産することが可能です。値段が比較的安いというのも一つの特徴です。環状DNAであるプラスミドにワクチンを作る上で必要な遺伝子を加え、大腸菌に導入する。大腸菌を培養することで、この遺伝子を含んだプラスミドを大量に得ることができる。若い人が新型コロナウイルスに感染してもあまり重症にならないのであれば、ADEが生じるリスクを避けてワクチンを接種しないほうが良いかもしれません。世界保健機関(WHO)の報告では、世界で70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでいる。実は、SARS(重症急性呼吸器症候群、コロナウイルスが原因の感染症)が流行した時に、従来の方法ではワクチンを作ることができませんでした。その際の経験などから、有精卵を使ってワクチンを作る手法だと、コロナウイルスに対するワクチンを作りにくいのではないかという話もあります。これがもし本当なら、先行きはかなり暗いです。だからこそ、抗体をつくる能力を上げるために、 ほかの企業と一緒に、第2世代のDNAワクチンの開発にも力を入れています。ワクチンや治療薬がなければ、ウイルスを抑え込むために、今後も緊急事態宣言のような強烈な対策を取らざるを得なくなりかねない。仮にコロナウイルスに対するワクチンが半年程度しかもたないとすると、毎年のように打たなければならなくなるので、少し厳しくなりますね。2019年に販売を開始したコラテジェンという血管再生のDNA治療薬でも、今回開発しているDNAワクチンと同じ仕組みを使っています。臨床試験では、比較対象となった方々との間で、DNA治療薬を使ったことで生じる重篤な副作用はみられませんでした。DNAワクチンといっても、従来のワクチンと同じように注射で接種される。また、ウイルスそのものを使うのではなく、ウイルスの遺伝情報をプラスミドに挿入して利用しているため、ウイルスのゲノム情報が公開されればすぐに開発に着手できる上、安全だというのも大きなポイントです。この手法は確立されたものですが、開発までにウイルスを見つけてから6〜8カ月くらいかかります。 また、有精卵を使う以上、すぐに大量生産することができません。また、すでにある程度安全性について確認済みのものを利用しているので、その面での心配は低いと考えています。アジュバンドなどを加えるにしても、もう臨床現場で使われている物質、承認されている物質を使う予定です。動物実験や一部のワクチンの臨床試験で報告されていますが、詳しいメカニズムは分かっていません。3月5日の記者会見でDNAワクチンの開発について報告する大阪大学の森下竜一教授。2020年3月には、オーストラリアで臨床試験を開始したことを報告しました。 来年には、結果が出てきます。そのときの開発ノウハウと、アンジェスが実際に世界ではじめてプラスミドDNAを用いた遺伝子治療薬を製作したノウハウがあったため、迅速に新型コロナウイルスのワクチン開発をスタートできました。世界中で新型コロナウイルスに対するワクチンの開発が進められている。バイカルは、エボラウイルスや鳥インフルエンザウイルスに対するDNAワクチンを開発しており、鳥インフルエンザウイルスが流行しかけたときに一緒に仕事をしていたんです。 世界中で流行が続く、新型コロナウイルス感染症(covid-19)。その治療薬やワクチンの開発は急務とされている。世界保健機関(who)の報告では、世界で70を超えるワクチンの開発プログラムが進んでいる。日本でも3月5日、大阪大学と大阪大学