後者の、オフィスに通勤するのが当たり前になってしまった組織で在宅勤務を可能にする方が手間がかかりますが、ちゃんと効果をあげたいならその手間をかけてやるべきでしょう。リモートワークをまかせられない人間に、何をまかせられるというのだろう。つねに見張っていないと仕事ができないダメ社員に、顧客と話をさせるなんておかしいじゃないか?シンプルに考えよう。あなたが上司なら、信頼できない部下を雇わないほうがいい。あなたが部下なら、信頼してくれない上司のもとで働かないほうがいい。『強いチームはオフィスを捨てる』は上司による管理などほとんど必要ない自律型社員を想定していますから、評価は仕事の成果で計ること、それを在宅の社員でもオフィスにいる社員でも徹底することで不公平感をなくすことを提唱しています。毎日会社でなんとなく会っているよりも、短い時間でも意識的にみっちりコミュニケーションをする方が信頼感を醸成しやすいということもあるかもしれません。どちらも、企業は生産性の向上や優秀な社員の獲得・定着のために在宅勤務を積極的に取り入れるべきだという主張と、在宅勤務を始めるための具体的なアドバイスが書かれています。ですが、日本の多くの会社の状況を考えた時、自律心のある社員ばかりで信頼関係が確立された会社ってそんなにないですよね。『在宅勤務が企業を救う』では、そうでなくても在宅勤務はできる、ということが主張されています。このような違いから、『強いチームはオフィスを捨てる』は少数精鋭でこれから組織を作っていくスタートアップ向きの参考書、『在宅勤務が会社を救う』はオフィスに出勤するという仕事の仕方を長年やってきた会社向きの参考書だと思います。一番大きな違いは、在宅勤務ができる人の条件についての考え方です。以上、組織とその社員のタイプによってより参考になるのはどちらの本かという観点で書いてきましたが、内容を比較してみるのも面白いので、ぜひ両方読んでみてください。一部の少数精鋭の企業だけではなく、広く一般的な会社が在宅勤務のメリットを享受すべし、という考え方から、『在宅勤務が会社を救う』では、在宅でも社員が緊張感をもって働き、管理者がマネジメントしやすいしくみITの力を借りて実現することが提案されています。前者の場合は、最初から在宅勤務ありきで仕事の仕方を組み立てていき、「在宅でできないことはしない」と割りきってしまうのも良いかもしれません(実際、お客さんからの問い合わせを電話では受けず、メールでのみ受けつけるという会社がありますし、ソニックガーデンさんは原則的にお客さんのもとに訪問することはせず、打ち合わせはSkypeでしているそうです)。社員をつねに見張っていないと不安なのは、企業文化が弱いせいだ。「自己管理ができない社員」がいるなら、自己管理できなくても、しっかり在宅で仕事ができるしくみや仕事環境を用意することが重要です。『在宅勤務が会社を救う』の方は、これまで管理者が部下の仕事ぶり(仕事への専念度)と労働時間で評価していたのなら、在宅勤務の社員に対してもそれができるようにしよう、ということが書かれています。2冊の本に書かれていることは相違点ばかりでなく、共通する点もあります。『強いチームはオフィスを捨てる』では、上司や同僚の目がないと仕事ができない人間はそもそも雇うべきではない、という考え方が示されています。2冊の本には、これ以外にもいろいろと面白い施策が説明されていました。『強いチームはオフィスを捨てる』では在宅で勤務する社員の健康や仕事以外の時間を充実させるための福利厚生的な制度について、『在宅勤務が会社を救う』では柔軟な勤務体系を取る社員とそうでない社員との間に不公平感が生じないように「働き方手当」という賃金制度を導入している、という話が面白かったです。「自己管理ができる社員しか在宅勤務できない」と思い込んでいると、企業が持つさまざまな「悩み」を解決することができません。その中でとっても大事だと思ったのは、組織のメンバー同士が実際に会う機会を大切にしよう、ということです。『在宅勤務が会社を救う』の田澤さんはワイズスタッフという会社も経営されていて、全国の在宅ワーカーを社員として抱えていますが、採用するときに必ず対面での面接し、また、会社の5周年や10周年の記念に全員が会う機会を作ってきたそう。長年勤めて実績を積み、信頼できる社員なら、在宅勤務をさせてもいいとおっしゃる方もいます。でもこれまで述べてきたような「在宅勤務」が必要な社員全員がそれに該当するわけではありません。子育ても、親の介護も、人を選んではくれません。どちらも、在宅勤務者とオフィスに来ている社員で不公平になることを避けることを目指しているのですが、その方法が正反対なのが面白いですね。企業文化が強く浸透していれば、手取り足取り教えたり、いちいち見張ったりする必要はない。メンバーはみんな自己管理ができていて、放っておいても企業の方向性に見合ったやり方で成果を出してくれる。だから、席にいようとどこにいようと関係ない。先日、「在宅勤務」の導入を考える企業やその社員にとってとても参考になる本が、同時期に2冊刊行されました。Basecampの場合、いろいろな国にメンバーがいますが、1年に2回、5日間は全員で顔を合わせて会社の方向性について話をしたり交流したりしているそうです。2冊の本の大きな違いのもうひとつは、仕事の評価についての考え方。 不公平さはありますが、その職種を選択した人の責任でもある。 自由な働き方を導入しやすい仕事・職種は存在します。この現実を経営陣・従業員共に受け入れることが第一歩目ではないでしょうか? 在宅勤務に向いている仕事の特徴をざっとこんな感じ。 どちらも、在宅勤務者とオフィスに来ている社員で不公平になることを避けることを目指しているのですが、その方法が正反対なのが面白いですね。 スタートアップ向きのやり方、一般企業向きのやり方
• 勤務可能者と勤務不可能者(自宅待機者)に対する公平性、不公平感。 • COVID-19対応した上での業務遂行への未整備。 • オフィスでしかできな業務への対応。 • 在宅勤務従業員への精神的ケア。 衛生面 • Social Distancingの維持と業務遂行の両立が難しい。 在宅勤務でも評価されるのか (りん1979・千葉県・41) 新型コロナウィルスの蔓延を避けるべく、先週から原則在宅勤務命令が出ました。打合せは全てoffice365のteamsを利用していて音声も資料も共有できるので不便は感じていません。 なので、在宅勤務に関してもやはり同じような、周囲の不満は多少あります。逆に、在宅勤務を希望する社員がいても、上司が認めない部署もあり、そういった意味での不公平感もあります。 A.2: コミュニケーション効率が落ちることが感じられます。